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【歴史の転換期:コラム】ヌマンシアの包囲
ヌマンティアの戦いにスポットライトを当てたのが16世紀末のセルバンテスです。セルバンテスはスペインの文学者の中で群を抜いて有名な人物です。しかし、『ドン・キホーテ』以外の作品で日本人になじみがある作品は少ないでしょう。彼が古代イベリア半島の都市ヌマンシアにおけるローマ軍との戦いを描いた戯曲が『ヌマンシアの包囲』で、スキピオ・アフリカヌス(小スキピオ)率いるローマ軍に包囲されたヌマンシアの住民が、壮絶な戦いの末に玉砕した、紀元前2世紀の史実に題材をえています。歴史が後世まで語り伝えられるために文学は重要な手段だと思いますが、この戯曲もそうで、超越的な英雄でなく等身大の人々を主人公としたこの作品は、戦いと名誉といった人々の感情を刺激し、その史実以上にあらゆる時代の「愛国心」に通じる普遍性をもちました。19世紀初頭のスペイン独立戦争の際も20世紀のフランコに対する共和軍も、この戯曲から「ヌマンシア」精神を学ぼうとさかんに上演されたそうです。そして現在もスペインでは、ワインの名前にもなってしまうほどに、ヌマンシアを知らない人はいないのです。
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