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【歴史の転換期:コラム】ローマ時代のイギリス
タキトゥス(ローマの歴史家)は著書の中で、ブリタンニア(今のイギリス)に派遣されたローマの総督が現地の人を使って神殿や邸宅を建てさせようとする場面を次のように描いています。
「張り切っている者らを励まし、怠けている者らを叱正すると、彼らは張り合って頑張るようになり、こちらが強制することはなくなった。さらに酋長の子弟にラテン語やローマの文化・教養を学ばせると彼らは資性に磨きをかけた。だからブリタンニアの人たちの才能はガリア人たちの熱意より高く評価されるとおだてた」。
イギリス人の資質が垣間見られる話です。
しかし一方で、大陸とは異なり島国独自の慣習を守り通そうとする面もありました。一つは独自の信仰です。ローマの隊長たちもローマの神と地元の神を折衷したり習合させたりしました。もう一つが貨幣です。大陸で浸透した貨幣がブリタンニアでは浸透しなかったのです。物の授受を習慣とする交換経済が成り立っていたからです。のちに国教会をつくりローマンカトリックと一線を引いたり、EU離脱など大陸とは距離を置くイギリスは昔から同じような路線を貫いているのでしょう。
ローマ帝国時代のイギリスを舞台としたローズマリ・サトクリフ『第九軍団のワシ』は子供向けの小説ですが、お薦めします。
ブリタンニア人との戦闘のため派遣されたローマ軍団の百人隊長が、行方不明の軍団の象徴〈ワシ〉を求めて旅に出る話で、話はとても面白いですが、ブリタンニア人の描かれ方には少々難ありかもしれません。
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