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秩父事件(ちちぶじけん)

1884年(明治17)11月に埼玉県秩父地方でおきた中農自由党員・貧窮農民(困民)による本格的かつ組織的な武装蜂起事件。養蚕・生糸生産を主産業とする秩父地方は松方デフレの影響を最も強くうけた地域で,借金農民の負債返済方法の緩和運動は84年に入ると質的にも量的にも拡大した。当初は債権者や郡役所への請願という合法的な運動が続けられたが,いずれも拒否され,10月になると蜂起への準備が進められた。決行予定日は11月1日であったが,10月31日一部農民が決起,警官隊と衝突し,事実上戦闘が開始された。困民軍は一時全秩父を支配下におくほどの勢いを示したが,警察の態勢の確立,軍隊・憲兵の出動,困民軍指導部の動揺と混乱などにより,月半ばには壊滅した。負債の年賦返済・諸雑税廃止といった生活次元の要求を基底にしつつ,村・県・内務省への要求を掲げたこと,きびしい軍律のもとに行動したことなどに特色がある。なお,この事件の理解・評価については,自由民権運動の一環とする見方と,伝統的な負債弁済をめぐる農民騒動の性格を重視する見方とが対立している。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

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