富本銭(ふほんせん)
7世紀後半に鋳造された銅銭で,和同開珎(わどうかいちん)に先行する貨幣。直径2.4cm,平均重量4.5gの円形方孔銭で,上下に「富夲」の文字,左右に七曜文(しちようもん)を配す。奈良県明日香村の飛鳥池遺跡で鋳造され,天武12年(683)の詔に登場する銅銭にあたる可能性が高い。大宝律(たいほうりつ)に私鋳銭の罰則規定があること,規格が初唐期の開元通宝(かいげんつうほう)に近似すること,「富夲」の2字が五銖銭(ごしゅせん)再発行の故事に由来することなどから,富本銭は実質的価値をもった貨幣と考えられる。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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