奉公人(ほうこうにん)
本来,武士の主従関係における従者をさすが,中世末~近世初頭では士分に取り立てられた武家奉公人をさす。江戸時代になると,主家の家業や家事に従事して労働を提供する者の総称となった。主人の身分や職業に応じて,若党・中間などの武家奉公人,農村奉公人,丁稚(でっち)・手代などの商家奉公人,職人の弟子・徒弟などの種別があり,奉公契約の形態によって譜代奉公,質奉公,年季奉公や日用奉公などの区別がある。17世紀に幕府は人身売買の禁止や年季制限を令したが,農村ではいぜん譜代・質奉公や長年季の奉公が多くみられた。江戸中期以降,農業の発達や商品生産の展開などから短年季の奉公が一般的となる。武家奉公では初期から1季や半季の出替(でがわり)奉公人が都市域を中心に広範に存在していた。なお商家や職人の奉公人は,技術の習得や商売の見習いを目的とするため長年季の奉公が多い。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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