印鑰(いんやく)
印鎰とも。印と鍵のこと。天皇の正印と朝廷諸司の庫の鍵。転じて諸官府の長官の官印と官庫の鍵,寺社の長者の職印と寺庫の鍵を意味した。具体的には国守の官印と国庫の鍵,僧綱(そうごう)の職印と僧綱所の鍵,天台座主の職印と延暦寺宝蔵の鍵などをさす。官府の長官や寺社の長者の交代時に印鑰を渡すことから,「印鑰渡し」が前任者から後任者への事務引継ぎを意味し,印鑰が官府や寺社を統轄する職務・職権の象徴ともされた。平将門が国府占拠にあたり国衙(こくが)の官印と国庫の鑰を掌握したことは有名。国衙周辺に印鑰を祭る印鑰社がよくみられた。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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