五衣(いつつぎぬ)
女房装束で,表着(うわぎ)と肌着である単(ひとえ)との間に着用した衣(きぬ)。衣は袿(うちき)ともいい,寒暖の調節と袖や裾の装飾とを兼ねて数枚重ねて着用した。重ねの枚数は華美を好みしだいに増えていったため,1044年(寛徳元)に衣を5領に限定。以来,通常の女房装束の衣は5領が慣例のように解釈され,五衣の名称が生じた。同型・同寸法の袷(あわせ)の衣5枚からなり,地質は冬が練絹(ねりぎぬ),夏は生絹(すずし)を用いた。とくに上級女房の五衣は表に綾(あや)や浮織物(うきおりもの),裏に綾を用いて表裏で襲(かさね)の色とし,さらに5領の色合いもそれぞれに違え,襲色目として趣向をこらし,紅梅(こうばい)・山吹(やまぶき)・卯花(うのはな)などの名称でよんだ。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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