市(いち)
物資や情報の交換取引が行われる場。大化の改新以前から河内国餌香市(えがのいち),大和国海石榴市(つばいち),同国阿斗桑市(あとのくわのいち)などが開かれていた。大化の改新以後,律令制のもとに平城京・平安京に東西市がおかれ,各地の国府でも市が開かれた。平安末期には月3回の定期市(三斎市)が開かれるようになり,鎌倉時代には社寺の門前,領主の居館周辺,宿駅・港津などにもみられるようになった。南北朝期には常陸国府市のように月6回開かれる六斎市が,三斎市と並行して発生。戦国期には諸国の農村にも広がった。戦国大名は独占的な市座を楽市令によって排し,市の発展を促した。江戸時代にも東国では六斎市が開かれたが,城下町などの都市の発展とともに常設店舗が発達し,一般に市は衰退。近世には江戸・大坂・京都などの大都市に米穀・青物・海産物などの大規模な卸売市場が発達した。新年の必要品などを扱う年の市や,門前・境内で開かれる祭礼市は今日まで続いている。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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