漢詩(かんし)
中国の言語文字を用いて創作した詩。一句が五言・七言からなるものが多く,通常,平仄(ひょうそく)や脚韻を踏む。奈良時代は宮廷を中心にした侍宴応詔の詩が多く,六朝(りくちょう)詩の影響をうけて詠物詩がうまれたが,五言詩がほとんどである。平安時代になると,唐詩の影響で七言詩へ展開するとともに題材も拡大し,「白氏文集(もんじゅう)」の渡来によってその詩風に影響された。鎌倉末期に留学僧や帰化僧らによって中国の禅林での詩文制作の風習がもたらされ,唐の李白・杜甫(とほ)や宋の蘇軾(そしょく)らが規範にされた。江戸初期は朱子学の文学観から軽視されたが,荻生徂徠(おぎゅうそらい)らの古文辞学派により盛唐詩を模する擬古主義が唱えられ,のちに自己の真情を率直に表現する自由な詩風が広がり,多数の詩人が登場して隆盛をきわめた。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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