歌舞伎(かぶき)
歌舞妓とも。本来は「傾(かぶ)き」つまり異常な行動をとる意で,この風俗を舞台化したのが,1603年(慶長8)に始まる阿国(おくに)歌舞伎(女歌舞伎)である。これは容色本位の舞踊劇で,売色による風俗的弊害から禁止され,歌舞伎は男優の演劇となった。かわって脚光をあびた若衆(わかしゅ)歌舞伎も同理由で禁止され,その後の歌舞伎は技芸本位への質的転換を余儀なくされた。これが結実するのが元禄期で,名優が輩出した。その後,浄瑠璃に押されて一時停滞するが,戯曲作法の確立,舞台機構の開発,所作事(しょさごと)の発達などにより,18世紀後半には再び隆盛をみた。文化・文政期から幕末にかけては退廃・解体期で,生世話物(きぜわもの)の発生と役柄の解体などが特徴。明治期以降は,演劇改良運動の影響で歌舞伎は高尚化・古典化の道をたどった。舞踊・狂言の両要素をあわせもった演技・演出法や,「世界」と「趣向」による作劇法など,現在も日本独特の古典演劇として伝承される。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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