仮名草子(かなぞうし)
江戸初期の仮名書きの散文作品の総称。慶長期から井原西鶴作「好色一代男」刊行の1682年(天和2)までに発行された小説類を中心とする。室町物語の流れをくむもの,古典文学のパロディである擬物語,随筆的内容のもの,怪談集や笑話本など説話文学系統のもの,戦記文学,紀行文学など,さまざまな形態や内容のものを包括する。それまで限られた階層の占有物だった文芸は,政治の安定と印刷技術の進歩により多数の享受者を獲得する。仮名草子は一般大衆の娯楽や啓蒙に奉仕すべく制作された。初期作品のほとんどは匿名性が強いが,後期には浅井了意という優れた作家が登場した。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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