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憲法十七条(けんぽうじゅうしちじょう)

十七条憲法とも。604年(推古12)に聖徳太子が作ったとされる法令。「日本書紀」同年4月条に全文を載せる。のちの律令や近代法とは異なり,官人に対する道徳的訓戒や臣下としての服務規律をまとめたもので,普遍的人倫としての和の尊重を説いた第1条以下,君臣関係の絶対性や臣下相互の協調,官人の心構え,民への慈愛などをのべる。その多くは儒教思想にもとづくが,三宝(仏法僧)を敬えとする第2条などは仏教思想であり,信賞必罰(第11条)や公私の峻別(第12・15条)を強調する点には法家の影響も認められる。官人に対する君主の道徳的訓戒は,中国南北朝時代の六条詔書などの例があり,その影響をうけた可能性が指摘される。江戸時代から偽作説があり,律令国家が形成される段階で太子に仮託して作られたとする見解もあるが,必ずしも説得的ではない。文体からは古い時代の特色も指摘され,推古朝時代のものとして扱うのがふつう。古代の日本で官僚制が成立するのは,大化の改新後7世紀後半のことで,推古朝の国制の基本は族制的な結合にもとづく世襲制であったが,他方この時期には,朝廷の品部(しなべ)が官司のようなかたちで整備されるなど,すでに官僚制的な政治機構の萌芽がうまれつつあった。前年の603年に冠位十二階が制定されたこともそうした動きに関連し,憲法十七条の制定と軌を一にしている。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

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