享保金銀(きょうほうきんぎん)
江戸幕府が正徳金銀を踏襲して,享保期(1716~36)に鋳造・発行した金銀。銀貨は正徳期とまったく同じ品位で鋳造が続けられた。金貨は正徳期の武蔵小判が旧貨である宝永期の乾字金(けんじきん)と同品位(84.29%)のために引替えが進まなかったので,改定後の慶長金と同一の86.79%で鋳造された。大判も元禄大判が回収され,慶長大判の品位に改鋳された(享保大判)。この良貨政策は,市場での貨幣需要に見合う金銀素材量を無視して進められたため,当初はきめ細かな割合遣い令を発して,新旧貨幣を併用せざるをえなかった。しかも新貨が物価表示の基準となった享保10年代には,深刻な物価下落と経済不況が生じ,元文改鋳を余儀なくされた。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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