北野天神縁起(きたのてんじんえんぎ)
菅原道真の生涯や死後の怨霊(おんりょう)談,北野天満宮の由緒・霊験などに関する絵巻物。鎌倉初期から制作され,転写・流布本も多い。最古の伝本は京都の北野天満宮所蔵本で,詞書(ことばがき)に「承久元年(1219)今に至るまで」とあることから「承久本」とよばれ,この系統のものの根本とみられるので「根本縁起」ともよばれる。大型画面に粗放な線描と鮮烈な色彩で描かれる異色作。怨霊の災いも描かれている。絹本着色。全8巻で縦51.5cm,横各巻845.2~1204.8cm。国宝。ほかに詞書の系統が異なる正嘉本(1258年頃),弘安本(1278年頃)があり,繊細な描写に優れる。正嘉・弘安本系の系統をひく「松崎天神縁起」(1311年),承久本系の「荏柄(えがら)天神縁起」(1319年)など地方作もうみだされた。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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