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古事記(こじき)

奈良時代初頭に成立した史書。3巻。序文によれば,天武天皇が国家を治める大本にして民を教化する基となるべき「帝紀(ていき)」「旧辞(きゅうじ)」の誤りを改め正して後代に伝えようとして,これを調べ実を定めたうえで稗田阿礼(ひえだのあれ)に誦み習わせた。しかし天皇の死で中断し,その後元明天皇の命により,712年(和銅5)1月28日に太安麻呂(おおのやすまろ)が撰録・献上したという。「続日本紀」には本書の成立について記すところがなく,かつては偽書説もだされたことがあった。上巻は神話で,中・下巻で神武天皇から推古天皇までを扱う。奈良朝にとっての近代は扱わないのが,書名に「古」を冠するゆえんである。現実の天皇の世界の正統性を確証するために,神話から始めて世界のなりたちと歴史を語ろうとする点で「日本書紀」と本質を同じくするが,「古事記」は近い時代を捨て,編年をせずに天皇の代ごとに記事をまとめるという相違がある。表現上でも漢文でなく,漢字の訓(意味)に依拠しながら日本語として表現しようとしている。またその神話的世界観も「日本書紀」のそれとは異質で独自なものをもっている。「日本古典文学大系」「日本古典文学全集」「日本思想大系」所収。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

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