国学(こくがく)
広義には日本の法制・歴史・文学・有職(ゆうそく)故実などを対象とするすべての学問だが,狭義には元禄期以降の復古的思潮にもとづいた学問をいう。いずれの場合も和学・皇朝学・皇国学・古学などの呼称が一般的で,「国学」を自覚的に用いた例もあるが,本格的に使用されるのは近代以降。国学は広く和学の成果に立脚し,代表的学者に契沖(けいちゅう)・荷田春満(かだのあずままろ)・賀茂真淵(まぶち)・本居宣長(もとおりのりなが)・平田篤胤(あつたね)らがあげられる。彼らは「古事記」「万葉集」をはじめとする日本の古典についての精深な研究にたずさわり,契沖の「万葉代匠記」,真淵の「万葉考」,宣長の「古事記伝」,篤胤の「古史伝」など顕著な成果を残した。学問方法は,契沖の文献主義から春満の古道尊重に推移したが,古語・古義に通達してはじめて古道の理解がえられるという認識で共通し,儒学の古文辞学の方法に通じる。真淵・宣長は古歌古文の実作の必要性をとくに強調したが,篤胤にいたって古道観が肥大化する一方,歌詠の実践には欠ける傾向となる。幕末期から近代にかけては,山陵や神祇官の復興運動として明治維新の一潮流となった。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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