郷村制(ごうそんせい)
室町~江戸時代初頭にみられる自治的な村落制度。この言葉は,1940~60年代初め頃に学界で盛んに使われた。古代の郷とも荘園制下の国衙(こくが)領の郷とも異なる,郷を単位とした協同的で自治的な独立した郷村が中世後期に新たに生み出され,荘園制を解体させる原動力になったという。荘園制にかわるものとして位置づけられた。郷村は,乙名(おとな)などの指導者層を中心に成員全体が参加する寄合(よりあい)をもち,独自の掟を定めて自検断を行った。その点では惣村と同義だが,郷村制の場合,本百姓を中心とした近世郷村制と,その萌芽となる中世郷村制を連続するものと考え,統一政権が成立する過程で自治的性格が失われ,支配の末端を担う存在になっていく,とする。その後,この時期の村落を郷と村の重層構造とする視点も示された。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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