郡(ぐん)
「こおり」とも。律令地方制度上の国の下の行政区分。浄御原(きよみはら)令制までに各地に成立していた「評(こおり)」が,大宝令制の施行にともない「郡(こおり)」と改称されてうけつがれた。所属する里の数によって大・上・中・下・小の5等級にわけられ,その等級に応じて在地の有力者から任じられる郡司の員数が定められた。大宝令施行後も地方への律令制度の浸透により,交通状況や帰化人の移配,蝦夷(えみし)・隼人(はやと)の服属など,在地の実情に即した郡の新置や統廃合が行われた。地方行政の末端にあって在地で民衆を動員できた郡司の力や,地方行政の運営を支える財源となった郡稲の存在など,郡は初期の律令国家の地方支配の基盤であった。やがて律令国家の地方行政の機能が国に集中するようになって以後,平安時代中頃からは荘園公領制の広がりによって制度的に変質し,行政区分としての機能をはたさなくなったが,その後も地域区分の名称としては存続し,中世・近世を通して国の下の単位とされた。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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