口伝(くでん)
口授(くじゅ)・口訣(くけつ)・面授とも。宗教・学問・芸能において秘法や作法などを直接に口で伝授すること。またその記録。仏教では法会の儀式次第や教義の解釈を弟子に伝授する際に行われ,とくに密教では本経・儀軌(ぎき)よりも重視された。公家社会では朝儀典礼に関する家説などを子孫に伝授する際に行われ,家説の口伝を有する人を家伝人といい,その人の言動が多少変則であっても由緒ある説として是認された。中世以後は神道・学問・和歌・茶の湯・華道・香道・武芸・音曲などの分野でも,口伝による伝授が行われるようになった。筆録で伝えにくいことだけでなく,さまざまな事柄の伝授に口伝が利用されたのは,恣意的な解釈を防ぎ,権威を維持するためであった。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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