万葉仮名(まんようがな)
漢字を本来の字義に関係なく仮名文字のように用いたもの。平安時代以降の仮名文字の創案のもととなった。金石文(きんせきぶん)・正倉院文書や,「古事記」「日本書紀」に仮名的に使用された漢字はすべてこれに入るが,「万葉集」に多様な使用例が認められ,古くから考察の対象となったので,その名をとってよぶ。漢字の音・訓を使った仮名的な使用で,正規な漢字のあて方以外に,動詞「あり」に蟻,助動詞「つる」に鶴,助詞「かも」に鴨をあてたり,「出」を「山上復有山」とするなどの言語遊戯的(戯書とよぶ)な使い方の例もある。使用された漢字の音をたどることで,仮名文字では判断できない当時の発音を知ることができるので,研究上の利点も多い。上代特殊仮名遣いの発見なども万葉仮名を通しての所産である。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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