苗字(みょうじ)
名字とも。代々継承される家の名で,氏姓ともいう。古くは氏(うじ)とは別で,藤原氏の家名として近衛・一条などがあるように,同一の氏からわかれた,分節化した父系出自集団の称といえる。日本の姓氏名の表記には複雑な変遷があり,庶民は室町時代以降家名を失い,屋号があったにせよ名だけでよばれ,武家などは住地・荘園を家名とし,略式では家名と通称,公式には氏・姓・諱(いみな)を重ねて用いた。たとえばのちの戸籍名伊藤博文は,略称が伊藤俊輔,公的には越智宿禰(おちのすくね)博文と記した。1872年(明治5)の壬申(じんしん)戸籍で姓(かばね)は廃され,氏と家名は苗字に解消される。この際苗字には,氏でも家名でも,また新たに案出した名でもよく,この登記された戸籍名が苗字とされた。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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