もののあわれ
元来「あはれ」は感動詞として用いられ,中古以来和歌的な叙情を含んだ美の概念として用いられてきた。「土佐日記」に「楫取(かじとり),もののあはれも知らで」と使われているのが最古の例。「毎月抄」に「やさしくものあはれに詠む」のが和歌であると定義され,定家仮託歌論書では「物哀体」という歌体がたてられた。「徒然草」にも「物のあはれは秋こそ勝れ」とある。しかし,これがとりざたされるのは,近世になり本居宣長(もとおりのりなが)が「源氏物語」をもののあわれの文学としてとらえたことによる。宣長はもののあわれによって文学の本質をとらえようとした。近代になり和辻哲郎らが宣長の考え方を批判し,現在では各時代・各作品のなかのもののあわれをとらえなおす試みがなされている。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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