南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)
江戸後期の読本。9輯。曲亭馬琴(きょくていばきん)作,柳川重信らの画。1814~42年(文化11~天保13)刊。「忠義水滸伝」をめざし,敵討物・巷談物・伝説物などのすべての要素を取り入れた構想雄大な史伝体小説。思想自体は仏教・儒教・武士道などにもとづく保守的な倫理観であるが,因果応報による勧善懲悪主義に貫かれた理想主義文学。馬琴は本作の第9輯中帙付言で,稗史(はいし)七法則という小説技法・小説理念を公表した。明治期になって坪内逍遥が「小説神髄」で稗史七法則を批判したが,批判の対象たりうる文学理念はこれ以外になかった。「岩波文庫」所収。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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