鉈彫(なたぼり)
鑿痕彫(のみあとぼり)とも。本来は江戸時代の円空(えんくう)仏などにみられる鉈による割面をいかした木彫りをいう。現在は木彫像の表面を仕上げる前の荒彫(あらぼり)ないし小造(こづくり)の段階で止め,意図的に丸鑿(まるのみ)の痕を残してしあげる表現法をいう。未完成像とみる説もあるが,鑿目の効果を意図した一様式とする説が有力。北陸地方に9~10世紀の古例がみられ,11~12世紀には関東・東北地方にその様式を典型的に示す作例が多く残る(神奈川県宝城坊薬師三尊像,同県弘明寺十一面観音像,岩手県天台寺聖観音像など)。畿内の造像文化に対する東国的美意識の表れとみる意見もある。鎌倉時代以降はしだいに形骸化し消滅。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
この記事が気に入ったらいいね!しよう