灘酒(なだざけ)
近世以降,灘目(なだめ)地方で発展した都市向けの良質な酒。伊丹・池田などの都市酒造業を凌駕して急速に発展した灘酒造家の多くは,在方商人として出発し,多様な商業活動の後に成長して専業化。灘五郷(今津・西宮・魚崎・御影・西の各郷)の経営規模は,天保年間には1000石以上138軒,5000石以上7軒,1万石以上3軒を数え,化政期には江戸下り酒の7割を灘酒で占めた。灘酒造業は精米工程において,従来の足踏精米から六甲山系からの急流を利用した水車精米へいち早く転換することによって労働力を節約し,量産化に成功した。仕込工程はおもに丹波地方出身の杜氏(とうじ)を中心とする出稼ぎ集団によって形成されていた。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
この記事が気に入ったらいいね!しよう