1. 用語
  2. 日本史 -に-
  3. 人情本(にんじょうぼん)

人情本(にんじょうぼん)

近世小説の一様式。書型は中本。たんに中本・泣本(なきほん)などと称されていたが,この分野の代表的作者為永春水が自作に「人情本」の称を用いたところから,この名称が定着した。女性をおもな読者として想定し制作された恋愛小説であるところに,大きな特色がある。1819年(文政2)刊行の十返舎一九作「清談峰初花(みねのはつはな)」と滝亭鯉丈(りゅうていりじょう)作「明烏後正夢(あけがらすのちのまさゆめ)」の2作を嚆矢とする。32~33年(天保3~4)刊行の為永春水作「春色梅児誉美(うめごよみ)」の成功により完成したかたちをみるが,春水とその作品が天保の改革にともなう出版統制の処罰の対象となり,衰退していった。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

この記事が気に入ったらいいね!しよう