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農奴制(のうどせい)

封建社会の農民の存在形態に関する概念。農奴とは領主の隷属下にあった農民で,領主に対して封建地代を納付し,農奴制は封建制の経済構造の本質的な構成要素となっている。広義の農奴は領主の強い人身的隷属下にあり,労働地代を納める農奴とその転化形態である隷農をも含み,経済的に自立していることから奴隷とは異なり,また身分的に非自由民であるところが賃金労働者とは違う。9世紀ヨーロッパの古典荘園制における農民の存在形態から抽出された概念だが,マルクスらによって封建的生産様式の下部構造をなす普遍的概念となった。日本では11世紀の武士団の形成過程が同時に農奴制の形成過程ととらえられてきたが,安良城(あらき)盛昭はこれを批判し,太閤検地によって農奴たる単婚小家族農民が成立するとし,それ以前は家父長制的奴隷制が支配的な社会だとした。これは学界に多大な影響を与え,論争を引きおこすとともに多彩な時代区分論が登場した。おおむね中世史家は安良城説を否定し,近世史家は安良城説を承認したが,農奴制の成立を荘園制の成立に求める学説や,中世社会を国家的奴隷制とする論者もあって,いまだ確たる結論はない。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

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