直衣(のうし)
尋常の衣の意で,日常用の表着をいう。直(ただ)の衣。本来,天皇以下上級貴族の私服であるが,雑袍(ざっぽう)の宣旨とよばれる勅許があれば参内服とすることもできた。束帯(そくたい)や衣冠の袍と同様にしたて,色は位色に制約されず使用できたため,位袍に対して雑袍とよばれた。しかし実際は,天皇や皇太子の色・位色・凶色などをのぞいたので使用できる色は限定された。夏は一重で紅と藍の2度染めの二藍(ふたあい),冬は袷(あわせ)で表が白,裏に二藍を用いるのが通例。袴には指貫(さしぬき)を用い,下着として衣を着用した。私邸では被り物に烏帽子(えぼし)を用いるが,参内の際にはかならず冠を着用する冠直衣である。天皇・上皇の着用にはかなり長めにしたて,指貫を用いず,衣と生袴(きのはかま)の上に直衣をつけ,裾広に前を広げて着用したので,御引直衣(おひきのうし)または御下直衣(おさげのうし)といった。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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