農耕儀礼(のうこうぎれい)
農業の生産工程の折目ごとに生産の無事・豊穣を祈願し,収穫を感謝するための祭祀儀礼。日本では稲作と畑作の場合があるが,主要な儀礼は稲作に関連する。「魏志倭人伝」の裴松之(はいしょうし)の注に「その俗正歳四時を知らず,但し春耕秋収を記して,年紀となす」とあり,3世紀頃には,春に耕作して,秋に収穫する現実の農耕作業によって年数が計られ,それにもとづいて農耕儀礼がなり立っていたと考えられる。7世紀初めに百済(くだら)経由で中国の暦法が伝来すると,農耕儀礼の折目の日は暦上の節日・節供の影響をうける。暦の採用以後,たとえば朔(ついたち)正月が重視されるのに対し,1月15日の小正月に多くの農耕儀礼が行われるのは,この日が現実の農耕作業上の1年の折目とする観念にもとづく。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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