男衾三郎絵巻(おぶすまさぶろうえまき)
武蔵国在住の武士の生活と継子いじめを題材とした絵巻物。後半を欠く1巻のみ現存。13世紀末成立。都風の優雅な生活を送る兄吉見二郎,武道一途の弟男衾三郎の兄弟は,大番(おおばん)警護に上京するが山賊に襲われ,兄は非業の死をとげる。その後,陰謀によって許嫁(いいなずけ)も出家し,後楯を失った二郎の女(むすめ)慈悲と母は,三郎の家で下女とされ虐待をうける。後半は失われているが,観音の利生による慈悲親子の救済が暗示される。御伽草子の先例としても貴重。絵は各段に春・夏・秋の背景をあてて季節的構成をとり,草花や鳥獣を細やかに描く。1295年(永仁3)頃の「伊勢新名所絵歌合」に酷似した画風を示す。広島藩主浅野家伝来。縦29.2cm,横1253.7cm。東京国立博物館蔵。重文。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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