蘭学(らんがく)
江戸時代,オランダ語を通じて学ばれた西洋の学術・文化・技術と西洋知識,ならびにその習得の総称。日蘭交渉の初期にはオランダ通詞が医術を兼修。8代将軍徳川吉宗の実学奨励策で,学者による学習が始まり,田沼時代には殖産興業と外国貿易拡大をはかる積極的世情のなかで,「解体新書」の訳述・刊行という画期的成果があった。実証精神が普及し,薬学・本草学など関連分野に拡大,外科から内科・眼科・産科などに分化した。一方,幕府天文方での改暦の必要から天文学・暦学が学ばれ,ニュートン力学の研究に発展した。18世紀後半に始まるロシアの南下,国際情勢の変化に対して,世界地理・西洋地理学の研究が進み,天文方に蛮書和解御用の新局が設けられ,蘭学は公学化した。アヘン戦争以降,対外危機意識が高まり,オランダ式砲術・兵学が幕府・諸藩に導入され,開国後は,長崎海軍伝習・医学伝習をはじめ,蕃書調所が建設された。蘭学塾も医師に加えて武士の入塾者が増加。外科術・種痘・コレラ予防などで西洋医学の優秀さが評価された。諸外国との条約締結,貿易の進展は,英語・フランス語・ドイツ語などを必要とし,それぞれの文化も摂取されるようになると,蘭学から洋学の名称が定着した。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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