宣旨(せんじ)
古代において上級者の口頭命令を下級者が奉り,その内容を記したもの。奈良時代には多様な場面,多様なかたちで用いられたが,平安初期からしだいに文書様式が定まった。太政官では,勅命をうけて上卿(しょうけい)が宣した奉勅と,上卿が独自に下した上宣との別があり,内容によって弁官が伝宣し史(ふひと)が奉じたもの,外記(げき)が奉じたものなどがあった。これにもとづき史や外記が諸司に下したが,これを諸司官人が承って宣旨として書き記す場合や,史や外記が奉じた宣旨そのものが伝達される場合もあった。諸司でも長官の命を部下が奉じて書き記した宣旨があった。形式は宣者と宣の内容,年月日を記し,日の下に「某奉」などと受命者の名を記す。このほか太政官から諸司・諸国や寺社に命令を伝達するための下文(くだしぶみ)形式の文書(弁官下文)を官宣旨と称したが,これは太政官符や牒(ちょう)と異なり捺印が不要で迅速に発給でき,官符・牒と併用された。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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