政治小説(せいじしょうせつ)
広義には小説の形式を借りて政治思想の宣伝・普及をめざす小説をさすが,近代文学史では,明治10年代半ばから20年代前半にかけておこった自由民権運動下に集中して現れた小説をさす。民権運動の勝利を寓意する1880年(明治13)に刊行された戸田欽堂の「(民権演義)情海波瀾」をその嚆矢として,矢野竜渓の「(斉武名士)経国美談」,宮崎夢柳(むりゅう)の「(虚無党実伝記)鬼啾啾(きしゅうしゅう)」,東海散士の「佳人之奇遇」,末広鉄腸の「(政治小説)雪中梅」とその続編「花間鶯(かかんおう)」などがその代表。作者の大半が実際の自由民権運動家で,その属する党派や執筆時期の政治情勢によってテーマに特色があるが,90年の国会開設以降は急激に衰退した。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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