人身売買(じんしんばいばい)
人間を売買する行為。それを業とするのが人買(ひとかい)。下人(げにん)身分を除くと,一般的には律令法・武家法ともに建前として非合法である。鎌倉時代の寛喜の飢饉では一時的に黙認されたが,あくまで非常時の例外的措置である。しかし,実際には平安末期から勾引(かどわかし)による人身売買が朝廷や幕府の禁止令にもかかわらず横行していた。この背景には「さんせう太夫」にみられるように,労働力供給に対する需要の存在があった。近世には労働力市場の成立と幕府の永代売買禁止によって,中期以降に年季奉公の名のもとで人身売買が行われた。この契約には本銭返奉公契約・質物契約・居消(いげし)質奉公契約などがあった。居消質奉公契約の典型が芸者・遊女・飯盛女といった年切奉公で,身売と称された。近代になると,マリア・ルス号事件を契機に日本の公娼制度が問題となり,芸娼妓解放令が布告されたが実効がともなわなかった。人身売買の消滅は,第2次大戦後の日本国憲法施行による基本的人権への意識の高まりと児童福祉法・売春防止法などの立法をまたねばならなかった。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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