招婿婚(しょうせいこん)
結婚後,新郎が新婦の両親の家かその近くに住む場合を,人類学では母方居住婚・妻方居住婚という。これを高群逸枝(たかむれいつえ)は「招婿婚」と概念規定し,南北朝期以前の婚姻方式で,以後の娶嫁婚(しゅうかこん)に歴史発展するとした。しかし平安貴族層の婚姻形態でも,生涯にわたる妻方居住ではなく,父系が成立していたことなどから,母系制に対応した人類学概念の招婿婚とは相違する。したがって現在では,平安時代は妻方居住をへた新処居住婚と当初からの新処居住婚の併存で,中世以降,夫方居住婚に移行するとされ,招婿婚概念の使用が否定されている。ただ平安貴族の場合,同一屋敷内での夫方両親との同居は一般的ではないため,この時期を娶嫁婚と規定することは疑問である。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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