攘夷論(じょういろん)
攘夷は夷狄(いてき)を攘(はら)う,斥けるの意味で,元来は中国の儒教において,礼の有無を基準とする華夷観念にもとづき自国を中華,周辺の諸民族を夷狄として賤しめ,中華への服従と感化を正当化する差別意識。日本の古代では,都を遠く離れた地域に住む熊襲(くまそ)や隼人(はやと)・蝦夷(えみし)などを夷狄としたが,近世以降は西洋諸国を夷狄とした。幕末期に,西洋諸国が強大な軍事力を背景にして日本に開国と貿易を迫ったことから,国家的・民族的危機意識にもとづく攘夷論が高揚し,外国公使館の焼打や外国人の殺傷事件がおこった。幕府が西洋諸国の圧力に屈すると,攘夷論はやがて討幕論と結びつき,幕府崩壊の一因となった。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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