私年号(しねんごう)
朝廷が正式に定めた年号以外の実際に用いられた年号。平安末期の保寿(ほうじゅ)(1167年頃)が狭義の私年号の最初とされる。中世前期には和勝(わしょう)(1190年頃)や建教(けんきょう)(1225年頃)などが用いられたが,使用された階層や範囲はごく限られていた。戦国期の東国では,民間層でかなり広範囲に使われた私年号が存在する。延徳(えんとく)(1462年頃),福徳(ふくとく)(1491年頃),弥勒(みろく)(1507年頃),命禄(めいろく)(1542年頃)などがおもなものである。資料的には板碑(いたび)が最も多く,そのほか過去帳・年代記・仏像銘・鰐口(わにぐち)銘・巡礼札など宗教的性格のものに多くみられるのが特徴である。広範囲に使われた背景には,民衆の天災・飢饉・戦乱からの救済願望があったと推測される。私年号の発祥地・考案者や伝達ルートについては未詳。江戸・明治時代にも若干ながら私年号が用いられることがあった。なお広義には,朝廷が正式に定めた年号以外のすべての年号をさし,異年号・偽年号・逸年号をも含む。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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