天賦人権論(てんぷじんけんろん)
明治期の自由民権論の基礎となる基本的人権の主張。人間の自由権は国家から付与されるものではなく,天から与えられた人間固有の権利であるとするもので,natural rightの日本的理解。1867年(慶応3)の福沢諭吉の「西洋事情」,75年(明治8)の加藤弘之(ひろゆき)の「国体新論」などの啓蒙書で紹介され,身分制秩序の否定の役割をはたしたが,当初は国家を支える自主的精神論の側面が強かった。自由民権運動が始まると思想的基礎理論となり,植木枝盛(えもり)の徹底した民主主義思想である抵抗権・革命権などを生む役割をはたして,民権論の深化・発展に貢献した。82年には加藤弘之が「人権新説」を著し,天賦人権論を否定したため,矢野文雄・馬場辰猪(たつい)・植木枝盛ら民権思想家が反論の書を刊行している。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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