有職故実(ゆうそくこじつ)
「続日本紀」延暦9年(790)7月17日条に,「有識者」とあり,「源氏物語」紅葉賀の巻にも「心ことなりと世の人に思はれたるいうそくのかぎり」とみえる。「有職」と書くようになったのは,鎌倉初期と思われる。朝廷の儀式典例にくわしいことを有職,奥ゆかしく,よろずにわたり心得のある人を有職人という。公家故実は藤原忠平(ただひら)の子の実頼(さねより)・師輔(もろすけ)に始まり,その作法をそれぞれ小野宮流・九条家流と称する。以後,貴族各自が儀式行事を運営することを主として記した日記を作成し,天皇家および貴族の家は儀式書とともに,日記などによって父祖の儀式作法を子孫に家流として伝えた。室町時代には,伊勢流・小笠原流と称する武家故実もある。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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