アルファベット
alphabet 1字1音の原則にもとづく表音文字体系。祖型は前2千年紀前半の原カナーン文字。ここから同千年紀半ばすぎに北セム系と南セム系の2系統が生まれた。これらは文字の配列順序だけでなく,全文字の半数程度の字形が異なる。文字はすべて子音字。北セム系はウガリト文字の他はすべて線状文字で,フェニキア文字に至って確立。前1千年紀に入ると,ここから現行の全東方文字(漢字系を除く)の母体となったアラム文字と,ラテン文字系やロシア文字系を含む全西方文字の母体となったギリシア文字が生まれた。ギリシア文字の段階で母音字が加えられた。他方の南セム系は,前2千年紀末にラクダを使う隊商交易が行われるようになると,隊商路に沿ってアラビア各地に伝播し独自の発展をとげた。なかでも南アラビア文字を母体とするエチオピア文字は,3~4世紀には音節文字に変貌した。南セム系で現在も使用されているのはこれのみで,他はすべてアラム文字系のアラビア文字にとって代わられた。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)
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