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中国(ちゅうごく)

Zhongguo 中国とは世界の中央を意味する。中華,中原,中土などとともに古代に漢族がみずからの居住地に与えた美称であり,その周辺を取り巻く非漢族の居住地と区別する概念として用いられた。当初その実態的範囲は黄河中・下流域に限られていたが,後世,漢族の居住世界が広がるにつれて歴代王朝の支配が及ぶ地域全体をさすようになった。現在は中華人民共和国の国名の略称,もしくは台湾を含めた地域全体を意味する用語,さらにはあるまとまった世界といった抽象概念として使われることが多い。実態的な中国,すなわち中華人民共和国は面積ではロシア,カナダに次ぐ世界第3位,ほぼヨーロッパ大陸の広さに相当し,その多様な自然環境に育まれた豊かな資源は,早期に築かれた高度文明のさらなる発展を促してきた。今日確認できる最初の王朝は殷(いん)(前16世紀頃)であり,秦漢帝国の古代統一国家をへて,その後あまたの王朝が興亡を繰り返した。そして18世紀には清朝のもとに政治的にも経済的にも最も繁栄した時代を迎え,名実ともに東アジアにおける中心となった。19世紀後半,アヘン戦争による敗北,それに続く半植民地化を強いられた中国は現実との矛盾を認識することが容易ではなく,近代化の改革に失敗したため,20世紀に入るとさらに劣悪な状況に追い込まれた。しかし1949年,中国共産党の指導のもとに再び統一を実現し,「中国」を回復した。現在の中国は外モンゴル(現在のモンゴル国)を除いてほぼ清朝の領土を継承している。ところで日本で中国を呼ぶ場合,王朝名以外では「から」「もろこし」などを用いたが,江戸末期より「支那(しな)」を使い出し,日清戦争後それを一種の蔑称として用いるようになった。「支那」は一説によればChin(秦)の転訛が語源とされるが,中国では本来使われなかった称号であったため,日中関係の悪化に伴い日本がそう呼ぶことに中国は強く反発した。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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