般若(はんにゃ)
「仏の知恵」を意味するサンスクリット語プラジュニャーの音写。ものごとを分析的に解明する一般の知識と異なった,直感的で総合的悟りの叡智(えいち)。大乗仏教では,菩薩(ぼさつ)がめざして修行実践すべき六つの完成徳目の最後に「般若波羅蜜(はんにゃはらみつ)」を掲げ,知恵の完成によって悟りが完璧となることを示す。『般若心経』(はんにゃしんぎょう)ほかの一連の般若経典では,「一切皆空(いっさいかいくう)」(すべての存在はさまざまな因縁が結びついて仮に存在しているにすぎず,それ自体の固定的実体を欠いている)と悟って,すべての執着を離れる「空(くう)」を般若の知恵の内容として提示する。この般若空の思想は中国仏教思想,特に禅宗教学の形成に大きな影響を及ぼした。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)
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