ヘレニズム
Hellenism この言葉は広狭二義に使われる。広義には,ヘブライズムとともにヨーロッパ文明の基調をなすギリシア精神を意味する。狭義には,純粋のヘレネスの文化と区別される前4世紀末以後の文化をさしたり,また政治史上ヘレニズム時代という場合には,前334~前30年の約300年間をさす。狭義のヘレニズムの用語は,在来4世紀末までの古典期と対比して,アレクサンドロス大王以後のギリシア人の歴史と文化を極度に蔑視してきたギリシア史家の伝統に対し,ドロイゼンがそこに新しい時代と文化とを認めて以来普及した。ヘレニズム時代においてはマケドニア系の王朝,いわゆるヘレニズム諸王国のもとにポリスの真の独立は失われ,特にギリシア本土のポリスは衰退した。エジプトやアジアの世界にギリシア人が盛んに移住した結果,経済的繁栄が東方に移り,特にエジプトのアレクサンドリアやロドス島,デロス島が仲介貿易で栄えた。この時代の文化の特色は,ギリシア文化がオリエントの広い世界に広まり,各地の古来の文化と融合したところにあるとされるが,近年専門家の間ではオリエント土着の要素を重視する傾きが強い。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)
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