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インダス文明(インダスぶんめい)

主としてインダス川流域を中心に,前2300~前2000年頃に最盛期を迎えたインドの古代都市文明。主要な都市遺跡としてモエンジョ・ダーロ,ハラッパー,カーリーバンガン,ロータル,さらに近年発掘されたドーラヴィーラなどがある。これらは城塞(じょうさい)と市街地を配した計画都市であり,城壁で囲まれ,整然とした直交街路が配され,排水溝が完備されていた。度量衡も文明圏全域で統一されていた。しかし王宮,王墓のような遺構は発見されていない。文字は使用されていたが(インダス文字),未解読である。この文明の農業的基盤はインダス川の氾濫を利用した小麦,大麦の冬期穀作であった。また河川ネットワークによって,都市と農村および都市間の流通が発達していた。工芸技術が非常に高く,とりわけ紅玉髄(こうぎょくずい)製品などは,海路によってバハレーンなどペルシア湾内諸都市を中継点として,メソポタミア地方に盛んに輸出されていた。このような西方との交易も,この都市文明の繁栄の基盤であった。しかし前1800年頃都市が崩壊ないし衰退し,文明圏の統制力や文化的画一性も弛緩し,地方ごとの文化が形成されていった。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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