異端審問(いたんしんもん)
・〔中世ヨーロッパ〕inquisition 宗教裁判ともいう。異端者を発見,処罰,予防する教会の法廷。古代以来,体刑は追放のみであったが,民間,俗権による私刑が多かった。その無秩序を是正するため,13世紀以後ドミニコ修道会による説得が始められ,1231年グレゴリウス9世が教皇庁に審問権を統一したが,俗権によるものも続けられた。宗教改革時代には,カトリック,プロテスタント両派とも火刑を行って悪名を高めた。・〔スペイン〕 イベリア半島において異端審問所は中世から存在していたが,王権直属の機関として重要性を持つのは15世紀後半から17世紀までである。国内の宗教的一元化をめざすカトリック両王は,1478年に教皇勅書を得て異端審問を開始。最盛期には国内16カ所に地方審問所を持つ中央集権的な組織となった。裁判は捜索や密告による証拠集めから始まり,証拠不十分の場合は被疑者への拷問も行われた。最終判決は荘厳な公開儀式で読み上げられ,重罪犯は火刑に処された。創設期から16世紀にかけては「正統」カトリック信仰を防護するため,コンベルソやモリスコ,プロテスタントが主な審問対象となったが,17世紀には社会のモラルの監視という役割が付与され,対象も同性愛者,重婚者などに拡大した。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)
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