宦官(かんがん)
去勢された男子で後宮に仕える者をいう。古代オリエントからギリシア,ローマ,あるいはイスラーム諸国に伝わり,オスマン帝国やムガル帝国でも盛んに用いられた。しかし,その最も顕著だったのは中国である。中国では先秦から宮刑に処せられた罪人を官に用いることがあり,また自宮宦官と称してみずから志願するものもいた。その職能は宮廷の雑用係であったが,天子の周辺に絶えずいることから,天子に政治権力が集中し,かつ本人にその資質がない場合には宦官の権力は増大した。後漢末,唐末,明末は宦官が権力をふるった代表的な時代であった。後漢では外戚に対抗して重用され,唐では兵権・財政権などを握り,明では秘密警察を組織した。しかし,宦官の権力は天子に寄生するものであったため,その天子が死ねば自動的にその権力もなくなる運命にあった。また,権力を持ち得た宦官はごく少数で,多くは貧困な土地の出身で,一攫千金を願うが果たせなかった者であった。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)
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