華僑・華人(かきょう・かじん)
overseas Chinese 中国本土から海外へ移住した中国系住民。世界各地に居住するが,その大半は東南アジアに集中し,社会・経済分野での活動もこの地域で最も顕著である。東南アジアへの中国人の移住は隋・唐代にさかのぼるというが,それが活発化したのは10世紀以降である。10~16世紀,中国人の海上交易活動が発展し,東南アジアの諸港市に滞在する中国系商人が存在した。その後18世紀までに主要港市に中国人居留地が形成され,18世紀以降は鉱山や農園の労働者の居住地も形成された。19世紀には,アヘン戦争後に中国人の出国が容易になる一方,植民地支配下の東南アジアで労働力需要が高まった。その結果,中国南部から「苦力(クーリー)」と呼ばれた男性の契約労働者が流入し,東南アジアの中国系住民は急増した。1875年苦力交易は廃止されたが,自由移民は1930年頃まで続いた。植民地体制下で徴税などを任せられた中国系住民は,やがて経済分野で影響力を持つに至った。1949年の中華人民共和国成立後,移住地へ定着する傾向や中国文化を喪失する現象もみられ,現在は仮住まいを意味する「華僑」より「華人」という用語で言及されている。78年の中国の経済開放政策実施後,彼らの中国への投資も活発化している。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)
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