月氏(げっし)
Yuezhi 古代中央アジアのイラン系とみられる騎馬遊牧民。前4世紀頃,西域をへて中国の西北辺境に進出し,胡服,騎射などの西方の文物を中国に伝えた。モンゴル高原に遊牧民族匈奴(きょうど)が台頭すると,それと敵対し,匈奴の冒頓単于(ぼくとつぜんう),ついで老上単于(ろうじょうぜんう)との激しい戦争に敗れ(前160年頃),主勢力はパミール西方に逃れた。それを大月氏と呼び,河西地方に残存した小月氏と区別する。大月氏はシル川を越え,アム川流域に存在したギリシア人のバクトリア王国を滅亡させた(前145年頃)。漢の武帝は張騫(ちょうけん)を派遣し,匈奴に対する軍事同盟を結ぼうとしたが,月氏はすでにその地に安住して同意せず,彼らの関心はむしろヒンドゥークシュ南のインドにあった。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)
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