綿織物工業(めんおりものこうぎょう)
インドにおいては紀元前にすでに優れた綿織物の生産が行われていて,その技術が高度に発達し,十字軍以来ヨーロッパ人の東方貿易の主要輸入品の一つとなった。中国では唐・宋の頃から綿織物生産が行われ,明代に全国に普及した。ヨーロッパでは10世紀にまずイベリア半島,14世紀にイタリア,17世紀にフランス,イギリスに普及した。しかしこの時代の綿織物は大部分綿と麻または綿と羊毛の交織で,純綿織物が生産されるようになったのは産業革命を通じてであった。イギリスのランカシャーが綿織物工業の中心となり,機械により製造された大量生産品がインドに輸出され,その伝統的な綿織物手工業に大きな打撃を与えた。その後ドイツ,フランス,ロシア,アメリカ,日本,中国,インドなどに近代的綿織物工業が普及して,イギリスの優位が失われた。インドでは手織の綿布生産は生き残り,現在も広く生産が行われている。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)
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