1. 用語
  2. 世界史 -み-
  3. 密教(みっきょう)

密教(みっきょう)

秘密仏教,金剛乗(こんごうじょう)ともいう。インド大乗仏教の後期における展開の一つ。すべてを明瞭に解き明かす顕教(けんぎょう)とは反対に,普通人にはうかがい知ることのできない秘密内奥の教えで,これは通常の言語や文字などの伝達方法や理論では表現不可能である。そこで悉曇(しったん)文字とか曼荼羅(まんだら)や図像など視覚に訴えたり,陀羅尼(だらに)・声明(しょうみょう)など音声によって聴覚に訴えるとか,または印契(いんげい)・修法(しゅほう)・儀礼などの身体を使った方法によって,師匠から十分な資格のある優秀な弟子へ直接に秘密裡に伝授される。6~12世紀に民間の呪術的祭式の影響下にヒンドゥー教と融合してベンガルやカシュミール地方で生まれた密教は,ネパールやチベットの仏教に取り入れられ,また唐代以後,中国や朝鮮半島・日本に伝えられた。日本では空海の真言宗系統の東密(とうみつ)と比叡山の天台宗系統の台密(たいみつ)とがあり,山岳修験道(しゅげんどう)や加持祈祷(かじきとう)などの民間信仰と密接に連関している。タントラ(怛特羅)は,「密教経典」という原義から,ヒンドゥー教系・仏教系両方の密教そのものを意味する語となった。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

この記事が気に入ったらいいね!しよう